イスラム諸国の嗜好に合った時計を製造することは、ヨーロッパの時計製造の長い伝統である。16世紀、ヨーロッパ諸国の大使が指導者に時計を献上し、彼らの慈悲を得ようとしたことから、主にオスマン帝国の支配者や地域の支配階級がヨーロッパの高級時計、特に懐中時計に興味を持つようになった。東洋における機械式時計の普及には、宗教も重要な役割を果たした。信心深いイスラム教徒は、1日に5回、特定の時刻に礼拝をすることが義務づけられている。
18世紀初頭、オスマン帝国の支配階級はすでに時計に対する特別な嗜好を持ち、イギリス、フランス、スイスのヨーロッパの職人たちはその嗜好を喜んで満たしていた。オスマン帝国の時計は、主に色褪せないエナメルで、幾何学的な装飾や星、三日月などのシンボル、宝石を使った豪華な装飾が施されていた。「オスマントルコの時計は、文字盤に東アラビア数字（ペルシャ数字）で書かれた特別な時間目盛りがあるため、「トルコ数字」とも呼ばれ、すぐに見分けがつくようになっています。
この「ルナ・ヒジュラ・クロック」のデザインでは、アワーマーカーと日付目盛りの「オスマン文字」、日付表示針の先端にある三日月、花や幾何学模様の装飾など、東洋の伝統的なモチーフを踏襲しています。文字板の針は、コンスタンチン・チャイキンが開発し特許を取得した太陰太陽暦（ヒジュラ暦）装置を搭載した独自のメカニズムで駆動している。
現在、多くのイスラム諸国では、宗教上の理由から太陰太陽暦を使用していますが、正式にはグレゴリオ暦を使用しています。そこで、チャイキンは「ルナ・ヒジュラ・クロック」のムーブメントを設計するにあたり、イスラム暦の表示をグレゴリオ暦の日付と月の表示で補う、つまり新スタイルにすることにしたのです。
